180人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございます……」
親切な言葉にますます混乱したけれど、私は素直に三浦さんの好意に甘えることにした。
アーケード街を抜けるとすぐにタクシー乗り場がある。三浦さんと別れる前に先日の失礼を詫びようと、頭上のアーケードが切れる直前で彼を呼び止めた。
「三浦さん」
「はい?」
「色々失礼な態度を取ってすみませんでした。実は私、あの夜のことなんにも覚えていなくて……」
「……え?」
私が覚えてないことによほど驚いたのか、三浦さんが急に私との距離を一歩詰めた。
近づいた彼の体から、何かが香る。その香りが、引き金だった。
ああ、私……この香りを覚えてるわ。
最初のコメントを投稿しよう!