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そう自覚した途端、忘れていたあの夜の記憶が映像となって、次々に頭の中に流れ込んできた。
酔ってふらふらの体を受け止めてくれた広い胸。
眠りに落ちていく寸前に耳に流れてきた、困惑した彼の声。
見知らぬ部屋で目覚めた私は、泣きながらこの人に一夜の慰めを求めた。
「私ったらなんてこと……」
「麻倉さん? ……覚えていないって、本当に?」
「いえ……たった今思い出しました」
「え? 今?」
私の顔をまじまじと見つめ、三浦さんは当惑した表情を浮かべている。その視線に耐え切れず、羞恥で全身が熱くなった。
「香りが……。あなたのその香りで、忘れていたことを全部思い出しました」
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