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私が問いかけると、彼は私から視線を外しアーケードの外に広がる夜空を見上げた。
「クリスマスの夜、たまたまあの場所を通りかかって、それであなたを見つけたんです」
その時のことを思い出しているのか、彼はゆっくりと噛みしめるように言葉を紡いでいく。
「あなたの頬を涙が伝うのが、僕にはまるでスローモーションのように見えた。その後直ぐにイルミネーションが消えて、辺りが真っ暗になっても、残像のようにいつまでも目に焼きついて離れなかった」
「……それで私を絵に描いたんですか? 心に残る光景だったから?」
それには答えず、ふっと息を吐きながら微笑むと、三浦さんはアーケードの外へと向かい、ちょうど走ってきたタクシーを止めた。
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