あなただけが知る顔

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 内山さんに再び呼び出されたのは、パーティから二週間後のことだった。  盛況だったパーティの夜とは打って変わって、今日のギャラリーKは人気がない。入り口から少し中へと進むと、ちょうど奥のデスクでパソコンを触っていた内山さんが顔を上げた。 「わざわざごめんなさいね。どうぞお掛けになって」 「今日は休みですから大丈夫です。失礼します」  そう答えながら応接室のソファーに腰を下ろした。いつものように、内山さんが淹れたての珈琲を勧めてくれる。 「それで、あの絵のことなんですが……」  交渉は上手くいったのだろうか。それとも断られた?  私は珈琲のカップをローテーブルに置き、内山さんの表情を窺った 「結論から言うと、お客様は了承してくださいました。……絵のことは諦めてくださるそうです」
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