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それにしてもなぜ彼は、クリスマスの夜に私と同じ場所にいたのだろう。
私には、あの朝以外に彼と会った記憶はない。有名な画家らしいけれど、彼の名前すら記憶になかった。
それなのに、どうして?
ここでこうして、ひとりで考えていても仕方がない。とにかく、彼と話をしなければ。そう思い、顔を上げた時だった。
ちょうど話を終えたのか、三浦さんを取り囲んでいた数名が、壁にかかる新作のほうへと吸い寄せられていった。私はこの機会を逃すまいと、足早に彼へと近付いた。
「こんばんは、三浦さん。先日はどうも」
目の前に立つ私を見て、彼は微かに目を細めた。それに気づいて、つい私も挑むような視線を向けてしまう。
「これは、どうも――」
「三浦先生!! この方、あの絵のモデルさんですよね!?」
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