海里のろくでもない日常

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 今日は自由席ではなく、指定席だった。 「じゃあ、一番、この旅を楽しみにしてたやつが窓際に座れ」 と言ってくるので、 「海里さんは楽しみじゃなかったんですか?」 と訊くと、 「いや……まあ、楽しみだが」 と何故か、気もそぞろに言ってくる。  なんだろうな? と思って、その横顔を見ていると、 「まあ、これでも呑め」 と海里は細い珈琲のボトル缶のようなものを出してきた。  よく見ると、お酒だ。 「へー。  こんなのもあるんですねー、最近。  子どもが間違えて呑んじゃいそうですよね」 と言うと、ピスタチオを出してきて、 「これと、この酒、半分ずつ呑んだら、ちょうどいいだろ。  お腹も膨れないし。  せっかくの旅なのに、ずっとお腹空かせて、窓の外見てるだけなんてつまらないだろう」 と言ってくる。
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