416人が本棚に入れています
本棚に追加
麻衣ちゃんの登場で、ひと騒動あったダンスサークルだったけど。
明日の本番へ向けての総仕上げも終わり、部長が諸連絡をして解散となった。
私と郁郎君は、その後さんざんメンバーからキスのことをからかわれて、もう泣きたい気分だった。
「なぁ、雪音。悪いんだけど、俺のこと家まで送ってくれないか?
今、周りが全く見えねーんだ」
郁郎君が、パチパチとまばたきをしながら言った。
「あぁ、うん。それはもちろんいいけど」
「それにお前、健斗と会わないとまずいだろ?
俺の部屋でアイツが帰るのを待ってれば?」
「うん、そうする……」
今日のうちに健斗君に絶対に会わなくちゃ。
麗花さんが動き出すかもしれないし、こんな不安な気持ちのまま明日を迎えるなんて絶対いやだもの。
いつもよりゆっくりとした足取りで歩いて郁郎君を部屋まで送り届けると、郁郎君は早速洗面台でコンタクトレンズを装着し始めた。
「あー、これでやっと視界がクリアになった」
そう言って、バフッとベッドに腰を下ろす郁郎君。
「あのメガネ、残念だったね」
「まったくだよー。中学の頃から大事に使ってたのに」
「ちゅ、中学~?」
あのオルゴールといいメガネといい。
郁郎君って、物持ちが良過ぎじゃないかな。
「新しくメガネ買うの?」
「うーん。どうすっかなー。
慌てて買いに行ったところで、もうサークルのヤツらに顔見られちまったしなー。
まぁ、そのうち買いに行くよ」
そう言って、郁郎君はゴロンとベッドに寝転んだ。
最初のコメントを投稿しよう!