弊害

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郁郎君が言ったことは、もちろん真実ではないけれど。 今ここにいるメンバー、そして麻衣ちゃんを納得させるには充分過ぎるくらい説得力があった。 麻衣ちゃんは頬に流れていた涙を手でゴシゴシと拭うと、クルリと私達に背を向けて、元来た道を走り始めた。 「麻衣?」 「「麻衣ちゃん!」」 彼女の突然の行動に、ビックリして声を上げる郁郎君と健斗君と私。 「どこに行くんだよ! 麻衣!」 郁郎君が必死に呼ぶけど、麻衣ちゃんは走るのを止めようとしない。 「郁郎、今目が見えないんだろう? 俺が追いかけるから」 「健斗」 「あとで連絡する」 健斗君の言葉に、コクリ頷く郁郎君。 健斗君はものすごい速さで麻衣ちゃんに追い付くと、彼女の腕を引いて引き止めた。 麻衣ちゃんに何やら優しく話しかけている健斗君。 麻衣ちゃんはコクリ頷くと、健斗君と並んでトボトボと歩き始めた。 しばらくすると健斗君がこちらを振り返って、口パクでこう言った。 『送っていく』 そんな健斗君に私は大きくうなずいて、視力の悪い郁郎君は雰囲気で察したのか手を振った。
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