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「ね、ねぇ。もしかして……だけど。
あのメガネをかけていたのって、自分の本当の顔を隠すためだった?」
今、“顔を見られちまった”って言ったもんね。
それって、出来れば見られたくなかったってことだよね?
「まぁな」
「どうして自分の本当の顔を隠す必要があるの?
郁郎君くらい整った顔だったら、相当女の子達に騒がれそうじゃない」
健斗君もすごいけど、それに匹敵するくらいモテそう。
「だからイヤなんだよ」
「は?」
「女に騒がれるのが面倒だからかけてたんだ」
「えぇっ、そうなの?」
私の問いに、郁郎君がうんと頷いた。
「だって俺、別に彼女が欲しいわけじゃねーもん。
言い寄られたって迷惑だ」
「め、迷惑って……」
「運動やめた時にさ、あーこれからはコンタクトなんか必要ないじゃんって気づいて。
それであの古いメガネをかけて外を歩いてみたら、パッタリ女が寄って来なくなってさ。
これはいいやと思って、それからずっとあのメガネ。
無駄な買い物も減ったし、俺には色々と好都合だった」
郁郎君は、淡々とした口調で言った。
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