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麻衣ちゃんが健斗君にそう言ったのは本気じゃなくて、空元気だったんだろうな。
だって麻衣ちゃんは、本当に郁郎君が大好きだったもんね。
「雪音」
「ん?」
「さっき、ごめんな……」
「え?」
「ほら、健斗の前で……」
郁郎君がそんなことを言うから、さっきのキスを思い出して一気に頬が熱くなってしまった。
「ああでもしないと、あの場が収まらないと思ったんだ。
恋人らしいキスじゃないと信じてもらえないと思って。
舌まで入れて、悪かったよ」
「うっ」
そんなこと口にしないでよ。
恥ずかしくて、顔から火が出そう。
「いいよ、もう。
結果、疑われずに済んだんだし」
「うん。
俺もやっと麻衣に納得してもらえたし。
お互いに利益はあったんだよな……」
利益、か……。
郁郎君にとってはそうでも、私にとっては本当にこれで良かったんだろうか。
一体いつまでこうやって、郁郎君と恋人のフリをしていないといけないの?
ますます健斗君とは、恋人同士だって言えなくなっていく。
私達、卒業するまで二人の仲を秘密にしないといけないの……?
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