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その後はなんだかあんまり会話もなくて、静かに時間が過ぎていった。
郁郎君はスマホのゲームを、私は本を読んでいたら、玄関のインターホンが鳴った。
鳴らしたのは、当然だけど健斗君だった。
「入れよ」
「うん」
郁郎君に促されて、ダンスの練習着の部屋に入って来る健斗君。
郁郎君はベッドに、健斗君はテーブルを挟んで私の向かいに腰を下ろした。
なんだか重たい空気が流れる。
それを打ち破るように、郁郎君が口を開いた。
「健斗、ありがとな。麻衣のこと送ってくれて」
「うん。あ、麻衣ちゃんさ、せっかく来たし、明日はお母さんと大学祭を見て帰るってさ。
でも、俺達が通ってる大学を受験する気はもうないって言ってた」
「そうか……。
俺、あとでおばさんに電話を入れておくよ」
麻衣ちゃん、私達と同じ大学を受けないことにしたんだ……。
せっかく勉強を頑張っていたみたいなのに。
なんだか複雑……。
「二人とも、色々ごめんな。俺と麻衣のせいで迷惑かけて。
俺、麻衣には付き合えないってさんざん言って来たはずなんだけど、どうやっても通じなくて。
今日やっとわかってくれて、実は内心ホッとしてんだ。
もちろんそのせいで、健斗や雪音にはイヤな思いをさせちまったけど……」
郁郎君はそう言うと、深いため息をついた。
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