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ふわふわサイキック・ガール
夏は嫌いだ。足羽紀里は教室の机に頬杖を突く。
気温が高いのがまず嫌だし、虫も増える。湿度が高いから、癖毛のコントロールが効かない。日差しも強いから、日焼け止め対策を施さないと肌が痛い。
おまけに夏祭り――紀里は教室の後ろから聞こえた単語を聞き捕まえて、足をぶらぶらさせながら胸中で悪態をつき続ける。中学二年にもなって、あの夏祭り?
ただの広い公園に、近所の大人たちの屋台が出るだけ。ビンゴ大会もやるけど、景品は醤油だの油だの、たまにお菓子。
でも、行かない奴は敗北者――そんな空気が周りから漂う。
「夏祭りなんて行ってたまるか、って顔だね?」
口を曲げて心の中で文句を言っていた紀里に、微笑みながら近づいてきたのはセミロングの髪を真っ直ぐ下ろした同級生。
彼女の言葉に目を見張り、息を呑んだ紀里は、慌てて小さい体を更に縮めて声を潜めた。
「なに? 『読んだ』のか?」
紀里に反して、あっけらかんと彼女は笑った。
「読まなくても分かるよ。紀里の考えてることなんか」
紀里は、ほうと溜息を吐く。
「なんだ……。びっくりさせないでくれ」
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