ふわふわサイキック・ガール

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 紀里は白川と夢恵を交互に観察するように見ていた。すると、夢恵と目が合った。夢恵は涙の乾いた満面の笑みで、紀里の肩を掴んで揺すった。言葉には出さなかったが、喜んでいる様子が分かったので、紀里は頷いた。良かった、夢恵が喜んでいる――紀里にとっても幸せだった。 「紀里、ごめん。白川君と一緒に帰ってもいい?」  夢恵は立ち上がりながら訊いた。尋ねてはいるが、承諾をもらえることを前提としているような口振りだった。 「うん。問題ない」  夢恵の意図に気付いた紀里は明瞭に頷いた。  白川が、教室に鞄を取りに行くと言うと、じゃあ私も、と夢恵が返す。二人並んで、というより、半歩ずれて歩いていった。  美術室に残された紀里は、無言で立ち上がり、持ってきた椅子を元の位置に返した。  開けた窓を閉めて、鍵をかけた。  そして自分も鞄を取りに教室へと戻ることにした。  教室に戻る途中、誰にも会わなかった。二年の教室がある階の長い廊下を見渡しても、誰もいなかった。  ただ一つ、紀里の机の上に、通学用のリュックサックが乗っていた。  うん、私の物だ。紀里は確認して、リュックサックを背負った。課題のテキストが詰め込まれていて、小柄な紀里は倒れてしまいそうになる。  ふと気になって、窓の方に近寄った。  思った通りだ。一番前の窓が開きっぱなしになっている。  窓を閉めようと手を伸ばした時、紀里の視界に映るものがあった。     
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