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「紀里のこと、『読んだ』りなんかしないよ」
言って彼女は長いまつげの目尻を下げて笑った。その笑顔がとても愛らしい。
彼女――平野夢恵はテレパスだ。ある時から突然、人の考えが頭の中に聞こえるようになったそうだ。
最初に紀里が夢恵と仲良くなった時、そんなことは露ほども知らなかった。
紀里は、早くに母親を亡くして、父親と兄との家族で育った。兄とは年が離れているため、一緒に遊ぶことはなく、一人遊びばかりしていた。そのせいか、生まれ持っての性質か、紀里は言葉遣いが他の女子と少し違う。体つきも小さくて、背の順はいつも一番前。肩につくくらいの癖っ毛を両耳の後ろでそれぞれ縛る髪型も、十年近く変えていない。おかげで小学校でも、この中学校でも、級友という存在は少し遠くから紀里を見守っている。
その見守りの輪の中に飛び込んできたのが、一年の時に同じクラスになった夢恵だった。
きっかけは理科で同じ班になったことだった。実験よりも、紀里を取り扱いあぐねていた女子達を後目に、
「足羽さん、温度の記録係やってよ!」
何の障害も感じさせずに夢恵は仕事を振った。
「あ、ああ……」
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