プロローグ 容疑者不明

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プロローグ 容疑者不明

「……ん?」  つぎの授業の準備をしようと、机の中に手を入れたとき、違和感があった。教科書の間に、なにか別のモノの感触。  取り出すと、それは箱だった。  大きさは俺の手のひらよりも一回り大きい。リボンなどついていて、やけにかわいらしい箱。 「なんだこれ?」  驚きが胸の内から飛び出してしまい、俺はつぶやいていた。  それを隣に立っている海斗が聞き逃すはずがなかった。 「あ! それ、バレンタインチョコだよ。今日は2月14日だからね。さすが誠花。モテるね」  ニコニコ、柔和な笑みを浮かべて、俺の顔をのぞいてくる。見慣れた表情を見て、心がささくれ立つのを感じ、海斗の顔から眼を逸らした。  金髪でいつもほほえむ海斗は外見上は天真爛漫なのだが、本性は悪戯好きでずる賢い。だから、その表情を見ると、騙されているような、嫌な気持ちになってしまうのだ。  海斗に返事をしないまま、俺はリボンを外し、包装紙をはがして、箱を開けた。  はたして、入っていたのはチョコレート。しかし、それだけではなかった。  メッセージカードが添えてある。
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