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それを横で見ていた海斗は「ちっ」と舌打ちした。
「あのさ委員長。最初に手を振って、君を呼んだのって誰だっけ? 僕だよね? それなのに僕を無視して、誠花にはかわいく手を振るんだ。ふ~ん、ずいぶん舐められたものだよ」
早くも、にこやか喧嘩腰。そんな態度だから、委員長の膨大な愛想も底を突いたのだと思うのだが、どうにかならないものか……。
委員長も気が強いから、言われっぱなしではない。
「冷酷な久保くんは知らないと思うけど、これでもアタシは人間なのよ。あからさまに自分を嫌っている人に優しくしたりできないもん」
「君は本当に憎たらしいな。僕がなぜ君を嫌っているのか気づいているクセに、被害者のような言動をする。僕たちは君を被害者としてではなく、容疑者として呼び寄せたんだ」
「容疑者? アタシがなにか罪を犯したって言うの?」
委員長はまさかの展開に眼を丸くした。
嫌いな人を理由もなく呼び寄せて、濡れ衣を着せて、いじめているような気分だ。かわいそうだから、その驚いた表情を証拠にしてあげたい気分だ。
だが、そんな現実逃避は海斗が許さないだろう。海斗にいじめられる委員長を救うには、俺が委員長の無罪の証明となる言葉を引き出すしかないだろう。
「委員長。いきなり呼び出して、ごめん」
「うん。大丈夫だけど、容疑ってなんこと? 金子くんに関係することなんでしょ?」
俺はうなずいた。どう説明したものか迷ったけれど、やっぱり見せるのが早いだろう。手にしていた、差出人不明のバレンタインチョコの箱を見せた。
「俺の机の中にコレを入れた人を探してるんだ」
委員長は興味津々。差し出された箱をまじまじと眺めた。
「へぇ。金子くんって、もうチョコレートもらっちゃったんだ。やっぱりモテるね」
委員長はなぜか悲しそうに言った。
表情は違うけれど、海斗と委員長はおなじことを言うんだな。
俺はモテたことなんかない。去年はチョコなんか一つももらうことは無かった。差出人は不明だが、こうして一つでもチョコをもらえている方が珍しい。
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