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「委員長は知っていたりしないか? 俺が休憩時間に立ち歩いているとき、誰かが俺の机をのぞいてたとか」
「知らない。だいたい、あの席には金子くんか久保くんがいつもいるでしょ?」
その通りだ。俺と海斗はほとんど教室から離れたりしない。トイレに一緒に行くこともないので、休憩中にどちらかが席を離れるときは、どちらかが席に留まる。誰かが俺の机にチョコを入れようとしたなら、どちらかが気づいているはずなのだ。
なのに、机の中にチョコは入っていた……一体どういうことだ?
早くも聞き取り調査は行き詰まってしまったが、代わりに海斗が口を開く。
「ふん。大根役者もいいとこだ。しらを切るつもりなら、もう少し上手くやってくれないと、張り合いがないよ」
「なによ。久保くんもあの席にずっといたでしょ? アタシが犯人じゃないことは二人が証明しているでしょう?」
委員長はうんざりした口調で言うが、海斗は認めず、首を横に振る。
「今日の授業をちゃんと受けてなかったのかい? 今日の四時目、昼休みの前は体育だったんだよ?」
そういうことか。俺は海斗がなぜ委員長を疑っているのかわかった。
俺と海斗があの席にずっといることはあくまで休憩時間に限った話だ。体育のときは当然席を離れる。だが、教室は男子が着替えたあと、必ず鍵をかけている。だから、その時間は頭から除外して考えていた。
しかし、考えなくてはならなかった。
教室の鍵は委員長が管理しているのだ。最後に教室を出た男子が委員長に鍵を渡している。
今日も例外なく委員長に鍵が渡っていたなら、委員長は体育の時間中は誰の目も気にすることなく、俺の机にチョコを入れられた。
委員長もこの考えに至ったようだったが、苦笑するだけだった。
「私が体育の授業を抜け出して、金子くんの机にチョコを入れたって言うの? そんなことはありえない。私は最初から最後までバトミントンをやってたもの」
体育は男女分かれて授業を受けるので、委員長がバトミントンをちゃんとやっていたか見ていない。しかし、そんなことは問題ではない。ほかのクラスメイトに聞けばすぐに証言が得られるだろう。
最初からあまり疑っていなかったけれど、どうやら委員長は犯人ではなさそうだ。
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