社内格差と結婚願望

8/20
1016人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
「酢豚は卯月さんの得意料理なんですよ。すっごく美味しいんです!ね、笠松さん。」 「うん、まぁ…。」 梨花に図星を指され、志信は少し照れ臭そうにトンカツを口に運んだ。 「なるほどな。」 「笠松…ガッチリ胃袋つかまれてんな。」 石田と前川のなんとも言えない視線を感じて、志信は思わず下を向いた。 「卯月さんはホントに料理が上手なんですよね。今度、教えてもらおうかな。」 「花嫁修行?」 志信が尋ねると、梨花はニコニコ笑ってうなずいた。 (長野さん、幸せそうだな…。) 結婚を来年の春に控えて、梨花は週一で料理教室に通い、自宅でも苦手な料理に挑戦していると、昨日石田がちゃんこ鍋を食べながら言っていた。 「あ、そうだ。今日の朝、始業前に青木部長から聞いてきました。」 レディースセットのオムライスを無言で頬張っていたありさが、口元にケチャップをつけたままで志信の方を向いた。 「ありさ、ここにケチャップついてる。」 前川が口元を指差しながら紙ナプキンを差し出すと、ありさは慌ててそれを受け取り、口元のケチャップを拭った。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!