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人を勝手に強姦しといて、嫌わないでくれなんて、カイの了見は相当おかしい。
「おまえに嫌われると辛い」
「どうして?」
そんなにカイが辛そうには思えない。
カイには楽しそうなこの船の仲間達もいれば、ルティシアにまで噂が届くようなたくさんの美姫達との親交もあるはずだ。
イシュル一人に嫌われたからと言って、海賊王子殿の世界が終わる訳じゃない。
たった一人の大事な友達に、父親の命を受けて、おかしな噂のある枢機卿のもとへと留学させられる事を内緒にしておきたかったイシュルとは、事情が違うと想う。
「どうして…て、オレはイシュルが好きで、大事だから」
「大事にされてない」
ふるふる、不機嫌に、イシュルは首を振った。
子供の頃は、遠くにいても、イシュルはカイに大事にされてると想ってた。
女官達もそう言ってくれたし、イシュル自身もそう信じてた。
でも再会するなり、遊び女もかくやとカイに犯されたから、全く大事にされてないと想う。
「…大事に想ってるよ」
「大事な相手を、強姦しない」
「…強姦じゃなかったぞ。イシュルだってオレが欲しいって言った」
「言ってない!」
「言った。オレが好きだって。オレが欲しいって」
「…や…っ、ん…っ」
イシュルの額に触れていたカイの唇が降りてきてて、昨夜の熱を思い出させるように、イシュルの唇を塞ぐ。口のなかに入ってくる。侵略するように、触れてくる熱い身体。
(…カイ…)
波の音しか聞こえないような暗い夜の狭間で、熱に浮かされながら、何度もその名を呼んだ。
他にすがるものが何もなくて、カイの身体に縋りながら。
(…や。カイ…)
(…欲しいか?)
(…な、に…?)
(…オレが、欲しいか?)
くちづけられたら、思いだした。
終わりのないような熱に肌を犯されながら、そう尋ねられた。
(…う、ん…)
質問に対する己の返事を思い出して、イシュルはカイのキスに抵抗しながら、発熱しそうだった。
なにがどうなって、そんなことを言ってしまったのか。
どうして昨夜もその前夜も、夜になると、イシュルの身体はカイの望む通りになってしまうのか。
キスされているとイシュルの意思とは無関係に、イシュルの身体がカイの意思に沿おうとしているのを、確かに感じる。
悔しくて仕方ない。どうなっているのか、わからない。
自分の身体なのに、まるで自分のものではないようだ。
「厭っ!」
「いや、じゃないと思うんだよ」
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