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「…おまえ、人の話、全然聞いてないだろ? …オレはイシュルの友で、いまはイシュルへの報われぬ恋に胸を焦がす身だ。我が友にして、我が愛しの君が安全で幸福であれば、オレの心も幸福だ」
「…父様がカイの提案に頷けば…、イシュルはカイのものになるの?」
イシュルの金髪が揺れる。
「…ドーリア枢機卿みたいに、夜伽の相手をさせる為に、カイは父様にイシュルをねだるつもり?」
「そんなことは言ってない。どーしても、オレの恋人になるのが厭なら、友人としてレンティアで暮らせばいいだろう? 実際、オレとイシュルは、子供の頃からの友なんだから」
子供の頃からの友というカイの言葉はイシュルを喜ばせたけれど、戸惑いは消えなくて、疑うように、上目使いでカイを見あげてしまう。
世間知らずの姫君のごとく、後宮の奥深くで女性達に囲まれて育てられたイシュルは、自分が美しいことなど気にもとめておらず、そんなふうにじっと見上げることが、カイをどんな気持ちにさせるかも知らなかった。
「…カイ?」
「…誘惑するな…、せっかく我慢してるのに、自制が効かなくなる…」
「カイ? …い、や…、」
カイの指先がイシュルの白い肌を辿る。客観的に見ると、ずっと裸で狼に抱かれてる状態なので狼の機嫌次第でいつそうなってもおかしくないのだが、妙に呑気なイシュルは、心の何処かで潜在的にカイに安心しているところがあって、ずっとカイを警戒し続けることができない。
「…い、やっ」
「…そうでもないみたいだぞ?」
イシュルの両足のあいだに入り込んでくる指と、耳元でからかうような声。
「…や、あ」
最初の夜はただ怖くて、二度目は酔っていた。まったく正気で、太陽が空に高いうちから、身体の奥を触られることに戸惑う。そして初心なイシュルが何より戸惑うのは、確かにカイの言葉どおり、イシュルの身体には激しくカイを拒否している気配がないことだ。
「オレ、あんまり、ていうか全く嫌がる相手って経験ないけどさ」
「…ん、ん」
「…イシュルのは厭がってるうちに入らないと思うんだよな…」
大きくひらさかれた両足。とんでもなくぶざまな格好。子供のころ、身体を清めてもらった女官にすら、こんな姿勢は見せたことがない。
「や、や」
自分でも触れたことのない秘密めいた部分をカイの指が広げる。嫌なのに、恥ずかしいのに、カイの指を少しも拒まない自分の身体が悔しい。
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