2408人が本棚に入れています
本棚に追加
「トメタヨー! ルシエル、トメタケド! カイ強姦シテナイッテ! 求愛ッテ!」
「人、それを言いくるめられたという」
「言イクルメ? クルメ? ダッテ! ダッテ、カイトイシュル、昨夜カラ、仲良サソウダッタカラ!」
「それは言えてるね、このお二人は…、昨夜も甲板で、なんか甘い雰囲気にアテられたーて倒れてたのいたし。皇子様、ゴメンね。昨日もカイに文句言ったんだけど、効果なかったみたいだね」
「…あの、でも」
昨日と違い、ほんのつい先程まで、カイの腕の中で泣かされていたイシュルは、レオナルドの顔を見上げるのさえ、面映ゆい。
「ひとつだけ、いいことがありました」
「なに?」
「カイの気紛れだと思いますが、人質としての身代金の要求はやめてくれると、父に私の遊学許可を求めてくれると…」
実際問題、状況は何も変わっていないが、イシュルのなかで、それだと、気持ちが大分違う。
「イシュルを、お嫁に下サイと手紙を書くンダ!」
「違うよ、ルシエル」
「おやおや。その様子じゃ、お姫様は、人質として攫われてるのが御不快だっただけで、カイが嫌な訳でも、レンティアが嫌な訳でもないんだ?」
「そんな願いを父が聞くかどうかはともかく…」
最初のドーリア枢機卿との話はどうなるんだろうと思うから。
「…カイの振舞いに不満はたくさんありますが、…友の暮らす海賊王国レンティアに行くのは、子供の頃からの夢でした」
「そりゃーよかった」
「何がですか?」
「皇子様、ずっと手紙で船に乗りたい、レンティアに行きたいって手紙くれてたのに、現実には、船も海もオレもみんな嫌なのか? て昨日、カイの奴、えらくガッカリしてたから」
「船も海も…初めて見るものばかりで、感動は…してます…、カイは…強姦魔じゃなければ、大切な友達です」
水の上を優雅に渡る、海賊王国の船。
楽しそうに船上で会話し、働く、異国の少年達。
船を操る技術の違いか、船体そのものの違いなのか、イシュルが浚われる前に乗っていたルティシアの船より、こちらの船の方がずっと揺れが少なく、海に慣れないイシュルの身体にも負担はかからなかった。
レンティアになんかいかない、とカイに憎まれ口を聞いたけれど、本当は、イシュルだって、伝説の海賊王国レンティアに行ってみたい。
「カイ、イシュル、好キー、欲シイー」
「ルシエール」
最初のコメントを投稿しよう!