16 好きということ

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16 好きということ

資格も無事に取れて間もなく、辻上は、新たな仕事探しを始めた。 だが幸いにも、3月の残りが数日となった頃、意外と、すんなりそれは決まった。 「ちょうど、今月いっぱいで退職する人がいるらしい。 で、その()きに、俺が入れることになった」 ダメ元で声をかけてみた大学時代の友人からの紹介だというそこは、 検査部門を持たない医療機関からの検査依頼を専門に請け負う研究所だという。 「ずっと頑張ってきたから、神様からのプレゼントだね、きっと」 「頑張ってきたのは、俺だけじゃない」 「でもレイは、学校だけじゃなく、その前からずっと頑張ってきたじゃない」 そう言う未波の頭を、微かに口元を綻ばせた辻上が 小さくワシャッとかき回す。 そして、そんな会話を交わして程なく、辻上の退職が4月半ばと決定。 しかし、そこからの現実は、二人に甘くはなかった。
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