3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
失得
...もしもし?
あぁ、私だ私。すまんな、こんな夜中に電話をかけて。
え?どうしたって...あぁそうか、君はニュースは見ないタイプの人間かな?今朝から大々的に取り上げてるんだがな。
なに、ニュースになってるのは大量殺人みたいな事件じゃあないよ。人殺しではあるが、一人だけさ。一応ね。
ただその一人の被害者がね...武藤なんだ。知ってるだろ?私の親友で、君とも面識があったはずだ。昔のクラスメイト、覚えてるだろ?
そう、彼が死んだ。包丁でズタズタに引き裂かれて、手足はもがれ目は抉り取られ...とにかくひどい様だったらしい。おかげで凶悪犯の仕業だって話題になってるんだ。
ネットの方でもキチガイだ狂人だと言われてる。私はそこまでひどい事件じゃないと思うんだけどね。
だから別に慰めなんていらないよ。同情を求めて電話をかけたんじゃないんだ。ただ、彼の死をきっかけに私も決心したことがあってね。それを話に来ただけさ。
私はね、自殺することにしたんだ。
理由?...もちろん彼の死はきっかけではあるけど、それが全てじゃないよ。今までのことが積もりに積もった結果さ。
その積もりに積もった話を聞いて欲しくて電話したんだ。ちょっと長い昔話になると思うんだが...聞いてくれるか?
...ありがとう。じゃあ話していこうか。君も知った話は多いと思うが...せっかく遺言みたいなものなんだ。君には黙って聞いてて欲しい。
ご清聴お願いするよ。
最初のコメントを投稿しよう!