モブ・パラドックス

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モブ・パラドックス

 物心ついたころには両親の仲は冷え切り、家族で仲良く過ごすという記憶はなかった。  そんなだからもちろん反抗期には盛大に反抗した。いや、そもそも反抗期なんてもんはなく、親の言うことなんて聞かず、自分の思うがままに生きてきた。  親もそんな俺のことなんて早々に愛想をつかしたのか、金だけ渡して後はほったらかしだ。おかげで俺は夜の街にたくさんのお友達ができた。  世間でいわれる所謂(いわゆる)『悪いこと』も一通りこなした自信はある。  万引き、窃盗、暴走行為に当たり屋、スマホ転売にコウブンショギゾウ?とかいうのもボスに言われてやってみた。  難しいことは分かんねぇえよ。なんせ頭はよくないからな!  そんな俺でも薬と色恋沙汰には縁がない。  とりあえず薬物はダメ、絶対。  というかこれはミイラ取りがミイラになるパターンだからな。売って儲けるつもりが、いつの間にか薬欲しくて必死で金かき集めるようになるからな。俺と同じ末端の仲間が何人か闇落ちしてんだよ。上からしたら末端はいい餌食だからな、ダメだな、これ。  色恋沙汰は……まぁ今まで言い寄られたことは……なくも、ない……。     
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