プロローグ 嵐の到来

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「今日から企画部の一員として働いてくれる新入社員の皆だ。皆、先輩としてしっかりと面倒を見てやってくれよ」 第一印象でいえば、やたらと目立つ奴、だった。 「藤堂隼人です。今日からよろしくお願いします」 「桜木冬真だ、よろしくな。ビシバシ鍛えてやるから覚悟しておけよ?」 「お手柔らかにお願いします」 当時の自分、桜木冬真(さくらぎ とうま)は、ちょうど企画部の室長としての仕事に就いたばかりだったが、丸五年間の自分の努力が報われたような気がして半分夢見心地を引きずっていた。 そんな桜木が教育係として教えることになったのが藤堂だった。 藤堂は仕事の覚えが早く、すぐに企画部の仕事に順応していった。華やかな見た目と人好きする性格も相まって、企画部の中心人物になるまでにそう時間はかからなかった。 目立ったのは容姿だけではなかった。藤堂は仕事の覚えが早いばかりか、持ち前の感性の鋭さや他にはない発想力でたちまち桜木と同じ、室長という地位に入社してから三年目で昇り詰めたのだ。 しかし桜木にとって藤堂の室長への昇進の知らせは、今までの自分の努力が無駄だと思い知らされた悪夢の知らせでもあった。そしてその日から、桜木は藤堂をライバル、ひいては天敵として見ることとなった。 昇進に伴って、藤堂のデスクは桜木の隣に並ぶこととなり、同僚として必然的に毎日顔を合わせることとなるため桜木にとってはもはや毎日が地獄に等しい環境になってしまった。 三年前の初々しさはどこへやら。藤堂は今も変わらない有能ぶりを見せつけ続け、桜木は今日も止むことのない胃痛と頭痛に悩まされ続けている。
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