偽りの騎士

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 レスター道場に着くとすぐにハンスと手合わせをすることになった。レスターはまた不在だった。  騎士戦になってからこっちまともに顔を合わせていない。  二人は防具もつけず、木刀を構える。  クロードはロベールの戦術を真似した。  どんなルールであってもロベールはいつも同じ試合運びをする。  防具試合でも、総甲冑試合でも。  開始直後は高身長を活用して、上段から降り下ろす。まともに食らえば剣を落とす。大抵の者は受けずにかわして下がる。そこを体格の重みで押し込むように壁際や場外へと追い立てる。  ロベールがするとまるで猛牛のようである。  ハンスの方がクロードよりいくらか高いのだが、ロベールのモーションを真似た上で飛び上がり、降り下ろした。  ハンスはいつものクロードの動きではないことにすぐ気付いたようで、身をかわす動きに慎重さが見えた。二、三合でハッとする気配がした。しかしクロードの目論見のなすがままだった。  クロードはロベールの得意な戦術の狙い通りに、ハンスを壁際に追い込んだ。  さすがにロベールがするように得物を打ち落とすことはできなかったが、ハンスの一瞬の隙に、自身の木刀を両手につかんで、ハンスの右肩から左上腕を袈裟に押さえる形で壁に押し付けた。 「グッ」  クロードはハンスの鳩尾に膝を打ち込んだ。 「ばっ、防具つけてないんだから手加減しろ」  ハンスは痛みに顔を歪めた。 「おおよ、防具なしだからな、お前、本気ださないと死ぬぞ。それとも、僕にいたぶられるのが好き? 死なない程度になぶられたい?」  クロードが意地悪くいうと、ハンスはムッと口を引き締めた。そしてクロードを突飛ばす。  突き飛ばされて離れ、ステップを踏んで立て直す。いつものように脚を使った戦術に切り替える。  しかし苛立ちから、目茶苦茶な動きでハンスを翻弄する。戦術として意味のない、相手を疲れさせ、自分も無駄に疲れる動きだ。  何か言いたそうで何も言わない。そんなハンスにいつも以上に苛ついていた。  ハンスが下がる際に、砂に足をとられてたたらを踏む。  クロードは防具をつけていないハンスの胴を目掛けて、木刀を振ろうとした。  一歩出たところで空気が動いた。反射的に木刀を掃く。  何かにあたった音がして、足元に視線をはしらせると、竹串が1本転がっていた。
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