枕詞

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「でも、犬もまだ居ないのに首輪だけってのも笑っちゃうでしょ?」 バカにされる前に自分で言う。 「いや、多分俺の方がもっとすごいよ。開けてみて」 そう言って私に差し出してきたのは小さな紙包みだった。 ? 「地主神社?」 小さな紙包みに書かれた文字を読む。 京都の有名な神社だ。 私も高校生の時、ここの神社でお守りを買った。 縁結びの。 それのお陰で今に至っている。 まさか結婚してるのに買っちゃう? 縁結びのお守り買っちゃったの!? 確かに先月、今私の目の前でにやにやしているうちの使えないこの夫も出張で京都に行っている。 こいつなら、十分にあり得る話だ。 「……えっと、これっ……て」 困惑する私が珍しいらしい。 目の前に居る使えない夫がさも愉快そうに笑う。 「早く開けてみてって」 「う、ん……」 恐る恐る開けてみると、朱色のお守りに金色の糸で文字が書いてある。 一瞬、やはり縁結び?と思ったけれど取り出してよくよく見ると違っていた。 でも、使えないのには変わりは無いらしい。 「安産祈願って……」 それはこれから出産控えている人が持つものでしょうが。 やはり我が家の夫は使えない。
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