枕詞

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付き合っているときに公園で遊ぶ子ども達を見て呟いた一言は今も私の心に深く刺さる棘だ。 『俺、結婚しても子どもはいらないな。苦手なんだ』 結婚してから六年が経ち、そろそろ私の年齢も高齢出産と言われる年齢に近付いてきている。 正直両親に孫の顔だって見せてやりたい。 でも、こればかりは私の我が儘でどうにかなるものではない。 だからずっとその気持ちを飲み込んできた。 それでも溢れ出てしまったのは、昨年生まれた妹の子どもを抱いたから。 私にとって初めての姪、花菜はまるで天使のようだった。 妹の子どもですらこんなに可愛くて愛おしいのだ。 それが我が子なら。 彼の子どもならもっと……。 『うちの使えない』夫であっても、やはり彼の事は好きだ。 愛する夫の子どもを産みたいというのは、やはり本能なのではないか。
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