アネモネ

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 頼むから、家に帰るまで、これ以上悪いことが起こらないように。  本当ならば、白装束で、滝に打たれながら、あの、なんて呼ぶのが正しいのかよくわからない、四角く切られた紙が連なって棒にくっついてるみたいなやつを振り回して祈るべきなのかもしれない。でも、あいにくあたしの家って仏壇があるし、定期的にお坊さんが来て線香をあげてたから、宗派が違うかも。  自室のドアを開けた。一応それなりに片付けているから、家に帰りたくないとか、家にいたくないと思うことは、そんなにない。仮に部屋を散らかすとしてもそれは自分自身であって、違う存在ではない…というところも大きいのだろうけど。  あたしは部屋に一歩入ると、いつになっても着慣れないスーツを脱ぎ散らかす。スーツどころか、下着まで全部脱ぐ。別に素っ裸で過ごすことに興奮するとかじゃなくて、ハンガーにかかったタオルをひっつかんで、そのままバスルームに直行。って言うか、何がバスルームだ。便所まで一緒についてきてるくせに。
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