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「ここは廃墟になって何年くらいなんすか。すごい荒れ果ててるんすけど」
「もう十年以上ですね。だいたいそのくらいの年月でこんな廃墟になりますよ。やっぱり我々みたいなのが先にお客さまとして来てるからですかね」
「ねぇ落書きあるよ。アハハ!『最強!』とか書いてあるし!」
「マジかよ」とバカップルが騒いでいるなか、師匠と呼ばれている男は地下へと降りようとしていた。
「あ、すいません。地下は最後で1階から見ていこうと思ってるんですが」
「あ、1人で大丈夫ですよ。慣れてるんで」
「あ、師匠。僕も行きます」
「君はまだまだだから皆さんと一緒についていきなさい。1人で見るのも修行だ」
よくわからない師弟関係を見せられた。
たまにいるのだ、こういう集団行動をとれない人間が。
だがそれも問題ない。
「では我々は上を見て周るので、後からついてきてください。それでいいですか?」
師匠は頷くと地下の大宴会場へと下りていった。
弟子は師匠に言われた『修行』という台詞で妙なヤル気が出たようだ。
1人減ってエントランスを突き進んでいると「いい写真とるぞ!」と弟子の意気込みが聞こえた。
一行は奥のバーラウンジと、ショップコーナーへと進んでいく。
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