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口数の少なくなったバカップルは、大きく穴の空いた壁を恐る恐る通り、移動した。
「まあ、隣とたいして変わりませんね」
少しでも恐怖心を和らげようとしたが、一度変わってしまった気まずい空気は戻らなかった。
「移動しましょうか」
「はい、そうしましょう」
バカップルの男のほうが言った。
「僕はもう少し残ってます」
弟子はこちらに振り向きもせずに夢中だった。
「では向かいの部屋にいますので」
そういって今度は向かいの部屋へと移動した。
吹き抜けになってしまった廃墟ホテルは、ちょうどここから先へは進めなくなっているのだ。
こちらの部屋は先程の部屋とは打って変わって綺麗なものだった。
廃墟にしては、だが。
「なんかここ、普通」
「扉も残ってるしな」
向かいの部屋とのギャップで安堵したのか、饒舌になっていった。
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