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◆ ◆ ◆
「ねぇ、神社行きたい」
講義終了と共に起きた響は、開口一番そう言った。
「こっから一番近い神社ってどこ?」
眠っている間に神道に目覚めた──とは思えない。
今は六月。初詣には遅すぎる。単位取得の願掛けというのも大袈裟だ。
「ねぇねー、調べてよ!」
「自分でやれ」
「いいから調べてっ!」
どうしても行きたいらしい。
仕方なく、スマートフォンで検索してみた。すると大学近くのバス停で八幡宮を経由する路線がある。
「ほら。ここなら、すぐに──」
画面を差し出すも、彼はそれを一切見ようとせず、
「じゃ、行こっ!」
カバンを肩に掛け、立ち上がった。
俺の都合はまったくお構い無し。溜息をつきたくなったが、いつものこと。慣れっこである。
彼はすでに講義室から出て行ってしまった。仕方なく後を追う。
「お前、どこ行くか分かってないだろ。先行くな」
「神社なんてどこも同じでしょ」
「失礼すぎるだろ」
そんな風に神社をなめてかかった響に、この後、バチが当たることになる。それは──。
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