1.秘密事/相談事

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   平日の夕方ということもあり、境内に参拝客は見当たらなかった。  拝殿の正面に立った響は鈴をガラガラと乱暴なほど強く鳴らした。  そして柏手を打つと、 「神様! 場の雰囲気でOKしてしまったボクをお許しください!」  と言った。  隣の俺にも丸聞こえの声量で。 「何……?」  自分の願い事も忘れ、耳を疑ってしまう。 「懺悔だよ!」 「そういうのは教会でやるものじゃないか?」 「知らない。キリスト教じゃないし」  だからって神社に来られたら、神様も困るだろう。 「まー、いいじゃん。大切なのは気持ち」  彼はポケットから小銭を出すと、賽銭箱に放りこんだ。  すると何を思ったのかもう一度、鈴を鳴らし、柏手を打った。そして、 「あと、龍広くんにも好きな人を作ってあげてくださいっ!」  と、言った。  今度は周りの杉林にまでひびき渡るくらいの大声で。 「……はい?」  彼が一体何を言っているのか、分からなかった。   
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