1.秘密事/相談事

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  「涼しい顔してるけどさー、龍広くんも実はほしいんでしょ、彼女!」  彼は肘で俺の脇腹をつついてきた。 「絶対ご利益あるよ! もしできたらさ、今度、Wデートしよっ」  浮かれたようにそんなことを言う。  その気の抜けた顔を見ていると喉の奥がグッと詰まるようだった。 「……バカが」  やっとの思いで口から出たのは、そんな悪態だった。  それ以外、何も言えなかった。 「はいはい! バカで結構!」  響は最後に「これは龍広くんの分!」と賽銭箱へ小銭を放りこみ、最後の柏手を打った。作法もへったくれもない。めちゃくちゃの参拝だ。  俺は茫然としたまま、何も願えずに立ち尽くすしかなかった。  胸の奥底が治りかけの傷のようにじくじくと痛んだ。  
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