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俺はぼんやりしたまま獅子舞を眺め、小さな紙切れを開いた。
大吉、だった。
獅子舞からの皮肉のプレゼント。
喜びも虚しさも無く、無心のまま文字をたどった。
──“なにもかもうまくいく。だが用心しなければすべて破れる。”
「はあ」
これでは何も書いてないのと同じではないか。
なんてことを考えていると、ふと、ある部分で目が止まった。
──待ち人、遅れるが来たる。
そうだろうか。
俺の待ち人はずっとそばにいて、でも手が届かないくらい遠くて……。
「龍広くん」
名を呼ばれ、ハッとした。
「なんか嫌なこと書いてあった?」
「別に」
おみくじをポケットにつっこむ。
──もう、手遅れだ。
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