1206人が本棚に入れています
本棚に追加
ヘドが出そうになりながら、ホットココアに口をつける。
これが驚くほど薄い。湯が多いのか、粉が少ないのか、あるいはその両方か──。
「いい加減にしろ。相談無しに一人で決められないことなのか?」
「だってだってー」
「たまには自分だけの頭でしっかり考えて答えを出せ」
ヘドを飲む──という表現は無いと思うが、ココアのせいで本当にヘドを飲んでいる気分だった。眉間にシワを刻み込む。
何か言いたげに見つめてくる彼に、少し唇を噛んでから、こう言い放った。
「俺だって、たまには、お前に──」
背後にいた女子学生たちの爆笑に阻まれ、俺の言葉は彼に届かなかった。
それで良かった。
それで良いに決まっていた。
本当の声なんて、どうせ届きやしないのだから。
最初のコメントを投稿しよう!