1.秘密事/相談事

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  「まさか、大凶だった!?」 「違う」 「凄いね、大凶なんてボク引いたことないやっ!」 「だから、違うって」  語尾が少し強くなってしまった。すると響は少し真顔に戻るなり、 「まあ、ムキにならないでさあ。ただのおみくじじゃん」 と、肩を叩いてきた。 「別に、ムキになんて」  ──ただ、少し……。 「そう? なら、よかった」  彼はやれやれという感じで、あくびをする。  そして、さっきはヒーヒー言いながらのぼった石段を、軽やかに下り始めた。あっと言う間にその背中が小さくなっていく。  手が届かないほどに遠くなっていく。  彼は俺のように途中で振り返ったりしない。  そのうち、こうして二人でいる時間も減ってしまうのだろう。  情けで作った恋人であったとしても、彼ならきっと大切にするだろうから。  長いため息をつき、目を閉じた。それから、祈るような気持ちでポケットの中のおみくじに触れる。 「龍広くーん!」  石段の遥か下から声が聞こえた。 「あんみつ食べたくなった! どっかで食べよー!」  俺は目を開き、歩き出す。  本当はもう帰りたかったが、黙ってついて行くことにした。  今はただ、一緒にいられる時間を大切にしよう──。    
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