2.相談事/艶ノ色 ※

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   二人の部屋は相変わらず小ざっぱりとしていた。  黒のソファ、ガラスのテーブル。リビングボードの上の大きなテレビ。  それ以外に大きな家具はない。 「さっ、めしあがれ」  ケティは俺の前にティーカップを置くと、そのまま隣に座った。  わずかに触れ合ったその肩は俺よりもたくましく、広い。  その姿からは女性にしか見えないが、ケティは男なのだ。  歓楽街で働いている。“ケティ”というのもそこでの源氏名。本当の名は聞いたことがない。  年は俺より三、四才上だったはずだが、その艶やかさのせいでもっと年上のように感じる。 「……いただきます」  頭を下げると同時に腰を浮かせ、ほんの少し距離を取った。  手にとったカップの中では黄金色の液体が揺れている。寒くもないのに指先が震えてしょうがなかった。 「大丈夫よ。毒なんて入れてないから」  見透かしたようなことを言い、ケティは自分のカップに口をつけた。  おそるおそる飲んでみる。口の中に広がった風味に、思わず眉間にシワが寄る。  お世辞にも美味しいとは言えない。子どものときに飲まされたオレンジ味の風邪シロップを思い出す。 「マリーゴールドのお茶なの。美肌に効果があるんですって」  彼はそんなことを言いながら、三つ編みをほどいた。  ゆるいウェーブのかかった髪がふわりと舞う。  俺はその揺らめきから逃れるように、顔を伏せた。するとカップから立ちのぼるマリーゴールドの華やかすぎる香りが鼻につく。  喉の奥が、グッ、と鳴った。  
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