2.相談事/艶ノ色 ※

4/9
前へ
/500ページ
次へ
   何か話さねばと思うのに、話題が無い。  ケティの方も何もしゃべらず、黙ったままだ。  何も映さぬ真っ黒なテレビ画面には、俺とケティの姿がうつりこんでいる。怯えたように身を強張らせている自分を情けなく思った。  ケティはそんな俺を画面越しにじっと見つめてくる。目が合った瞬間、少し微笑んだようだった。  いたたまれなくなり、きつく目を閉じた。その風邪シロップのようなものを一気に喉へと流す。カップを置いてそろそろ帰りますと言いかけたとき、 「どうしたの?」 「えっ」 「不安で頭がいっぱいって感じね」  彼の白い両腕が伸びてきて、俺の黒髪に触れた。襟足を撫であげたかと思えば、首から肩へと音もなく巻きついてくる。そして、 「なぐさめてあげる」  耳元で含み笑った。 「んっ──」  その瞬間、一気に体重をかけられ押し倒される。  拒絶は唇によって塞がれた。  抵抗しようと伸ばした手は掴まれ、強く押し付けられる。  皮のソファがミシミシと音を立てて軋んだ。  
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1206人が本棚に入れています
本棚に追加