1.秘密事/相談事

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      ──『話したいことがあるんだけど』  と、響が電話をかけてきたのは昨夜のことだった。課題のレポートについてだと思いこんだ俺は適当に相づちを打った。  〆切までだいぶ日数があったからである。  挙げ句、「明日、大学で聞く」などと悠長なことを言ってしまったのだ。  次の日、学生食堂にあらわれた彼はいつになく神妙な面持ちだった。  いつも血色の良い頬は青白く、やつれたように見えた。  焦げ茶色の髪はボサボサ。左耳の近くに寝癖までついている。  レポートのことではないとすぐにピンときた。課題のことでそこまで神経をすり減らす響ではない。  ならば、月末の給料日まで金を貸してほしいという申し出だろう。  いつものように最初は冷たくあしらって――などと、脳内でプランを組み立てる。  そんなとき、響はそっと口を開いた。 「実は……、バイト先の女の子に告白されちゃってさ」  一瞬、何と言われているのか理解できなかった。 「今までまぁまぁ仲良くしてた子なんだけど」  まばたきする度、視界が狭まるようだった。  暑くもないのに汗がふきだす。 「ああっ、違うよ! ボク、ぜんぜんそういうつもり無くて。バイト以外で会ったこと一回もないし。びっくりしちゃってさあ、なんなんだろーねぇ、もぉー! まいっちゃうなあ!」  
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