1.秘密事/相談事

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 しばらく呼吸すら忘れた。  こんな日が来るなんて少しも予想していなかったから。  自信があったのだ。  響には絶対に女が寄り付かないと思い込んでいたのだ。  よく考えてみれば甘い考えだった。モテそうな片鱗はあることにはあるのに――。  正義感のある凛とした眉。  黒目がちで、輝きの褪せない瞳。  スッと高い鼻。  横に広くて薄い唇。  その間からのぞく前歯は、まるで小動物のような愛嬌がある。  物好きな人間は、うっかり恋に落ちるかもしれない。  あくまで“俺の”色眼鏡で見ればの話だが。  
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