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「……龍広くん?」
名前を呼ばれ、ハッとした。
息を吸った瞬間、ホコリが喉に絡み、激しく咳き込んでしまう。
「だ、大丈夫!?」
背中をさすられながら、泣きそうな気分になった。
たかをくくっていた。
完全に油断していた。
響には最悪の要素がひとつだけあるから──。
ファッションセンスがあまりにも独特すぎるのだ。
他人にどうみられようとお構いなし。その上、ド派手なものを好む。
ほったらかしておくとヒョウやトラ柄のTシャツを着たり、鳥除けみたいなキラキラを身にまとったり、全身を原色で統一したりする。
ついこの間は赤いハンチング帽に、真っ黄色のポロシャツ、グリーンジーンズというファッションであらわれた。
流石の俺も黙っていられず「信号機か!」とツッコミを入れずにはいられなかった。
そんなファッションモンスター・響である。
まさか告白するツワモノがあらわれるなんて。
「突然すぎてびっくりした?」
今日も今日とてウロコ模様の青シャツを着ている。お前は鯉のぼりか。高いところに吊り上げてやりたくなる。
こんな男を好いている女がいるのだ。
おぞましかった。
世も末だと思った。
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