1.秘密事/相談事

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 もっとよく周りを見てみろと叱りつけたかった。  冗談じゃない。  響は、ずっと俺だけの──。  脳裏によぎった言葉を振り払い、ついでに背中をさすってくれた手も払った。 「それで何て答えたんだ?」  咳払いして気を取り直す。  本当は聞きたくもないのに、話をとめるわけにはいかない。 「んー、考えたけどよく分かんなくって」  その言葉に、少しホッとする。 「だから『ちょっと待って』って言ったんだけど、『待てない』って泣きそうな顔で言われちゃってさあ。まいっちゃって」  彼は依然として笑顔のままである。  青い青いの空の上、風にゆうゆうと舞う鯉のように──。 「まさか……お前……」  一方で、俺の中の雲ゆきは怪しくなった。  全身の血の気が引いていく。  嘘だ。  嘘だと言ってくれ。  
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