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「待ってよ!」
璃子が追ってきている彼に気付くと本気でダッシュした。
部内では足の速さでは一番だった。
璃子が本気で走っている事に気づいて、彼も足に力を込めた。
一気に璃子の左腕が後方に大きく取られた。
男女のスピードの差はあったとしても、距離はかなり開いていたはずだ。
彼は一瞬で追いついて璃子の腕を握っている。
「何だよ……。 声かけただけなのに、どうして逃げるの?」
息も切らさず彼は璃子に話し掛ける。
「……手、……離してもらえます?」
璃子は息を切らせながら、彼に話し掛けた。
「じゃあ逃げないで」言うと彼は璃子の手を離した。
「どうして逃げたの?」
眉間に皺を寄せ、彼は璃子の顔を見る。
「家に御用でしょ? 私は関係ないので」
「いや……用があるのは璃子にだけど……」
ピクリと璃子の眉が上がる。
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