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「その呼び捨て止めてもらえますか?」
「子どもの時にはそう呼んでただろ? 璃子も柊也と呼んでたじゃない」
「だから覚えていません。私急いでるのでもう追いかけないで下さい」
そう言うと璃子はまた彼に背を向けて歩き出した。
その後を付いて彼も歩き出した。
「俺……璃子に会いたくて帰国したんだよ。昨日アメリカから」
アメリカ……?
そんな所に親戚がいたかどうか璃子にはよくわからない。
璃子がハッとして立ち止ると彼を振り返った。
「まさかあなたが転校生!?」
部室で明日香が話していたことを思い出した。
男の転校生が来る――――
「そう。俺も2年だよ。同い年だろ? よろしくね」
「……わかりました。私には話しかけないで下さいね」
彼の顔色が変わる。
「俺、璃子に何かした?」
「だからその『璃子』って止めてもらえますか? 苗字は『橘』です。ご存じでしょうけど」
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