芳乃 加寿美

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 しかし理由はさておき、腰を入れて進行表なんかの入り組んだ事務仕事をしたい時には、覚悟が決まってありがたい部分も否めなかった。  日中は打ち合わせや電話対応、諸々の準備で、パソコンに触る暇もないことが多いから。  わたしの仕事はウェディングプランナーだ。  というと、同性の知人には、ジェニファー・ロペス主演の映画で知っていると言われることも多い。幸せなカップルの、一生に一度の挙式・披露宴のプロデュースのお手伝いだ。毎日充実している。やり甲斐があって、忙しいのも苦にならない。  けれどたまにはリフレッシュしたいこともある。  人肌に触れてほっとしたいことも。他人にあられもない姿を曝け出してどきどきしたいことも。異性に甘い言葉をかけられたいことだって。  ある。けれど他業種の男とは、予定が合わない。  無理やり週一あるかないかの休みに合コンをねじこんで、多少いい雰囲気になってメールアドレスを交換しても、メールを送る時間がまず取れない。なんとかデートの約束にこぎつけても、休日に急ぎの打ち合わせが入ることはザラだし、人が足りなくてピンチヒッターで呼ばれることもある。  結果、自然消滅ばかりだ。     
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