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「ママ、おたんじょうびおめでとう!フーして!!」
私がリクエストした、生クリームと苺たっぷりのデコレーションケーキ。
真っ暗な部屋の中で、丸く並べられたキャンドルの小さな炎が優しく揺らめいていた。
「はやく、はやくぅ!」
五歳になるひとり息子の優斗がせかすので、私は笑いながら「いくよ?」と声をかけて一気に炎を吹き消した。
「わぁっ!」という優斗の歓声と、つたなく愛しい拍手の音がする。
煙りの匂いが鼻先にふわりと漂うと、父がスイッチの前で準備していたのか部屋の電気がつけられた。
主人の膝の上で抱っこされていた優斗は、待ち焦がれていたように私に駆け寄ると、両手に持った一枚の画用紙を差し出した。
「はい、ママ!ぼくからの、たんじょうびプレゼント!」
「わぁ!ママのために描いてくれたの?」
「うん」
「ありがとう、優斗」
頬を赤らめ、はにかんだように微笑む我が子の頭をクシャクシャと撫でる。
画用紙にはクレヨンで『だいすきなママへ たんじょうびおめでとう』のメッセージと、私のカラフルな顔が描かれてあった。
「すごい!ママそっくり!優斗、文字もこんなに上手に書けるんだね」
「じいじにおしえてもらったの」
照れながら答える優斗の視線の先では、私の父がにこやかに微笑んでいた。
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