1章 3 ブリーズレス

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「うあー酸素うめー!」  「く、苦しかった…」  家を出たのがもう夕方だったからか。駅についたころにはもう、陽が落ちて暗くなっていた。でも、街は落ち着きなんてまったく見せず、ホームからでもその喧騒に胸が躍る。  「僕、実はお祭りって始めてで…」  「えぇ!そんな奴いんの?」  「いや、見たことはあるんですけど、ただ、じっと眺めてただけで…」  「マジかー。え、じゃあ、イカ焼きとか、電球ソーダとか、りんご飴とか、カキ氷とか、食べたこと無いの?」  「観たことあるだけですね…」  「嘘だろ!腹減ってる?」  「ま、まぁ…」  「じゃあ、ちょっと色々観て回ろうぜ。」  サンダルで指がすれて痛い。でも、そんな事気にならないぐらい、はしゃいだ。  雑踏の中、輝く縁日の灯りは、人間の生命力で光ってるみたいだ。悠は子供みたいな顔で目をキラキラさせている。自分の興奮をまるで、興奮したら負けだとでも言わんばかりに、押さえ込んでいる。ソースや、焼かれた砂糖の匂いが人の汗やパフュームの匂いと混ざり合い、独特の祭りの匂いを作り出している。  「ど、どれが美味しいんですかね…」  「どうだろ。不思議と、何食っても美味いよ。高いけど。」  「咲人さんは何か食べないんですか?」  「そうね…じゃあ…とりあえず、なんか飲もうか。」  屋台の列で並んでいる時間は、不思議とどれだけ待っていても飽きない。きっと、遊園地のアトラクションの様に、これから来る幸福を待つ時間は、その時間自体も幸福なのだ。  そして、俺は、電球ソーダを買った。  「しかし、身体に悪そうな色だな…うわー!甘!どう?」  「光ってます!」  「ハハ、見れば解るよ。」  
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