アナザーエンディング

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~~~ 170ページから、続きます。~~~ *** 「洸はあの事件に偶然、巻き込まれたのではない……。俺が、古い事件を掘り起こした事への制裁だ」  あの時、テロリストたちに感じた違和感は、やはり正しかったのかと腑に落ちた鷹志は訊いた。 「……話せる事、俺に?」  滝川が首を横に振った。青ざめた顔を更に震わせている。 「……機密だ」  鷹志は滝川の頬から下ろした手で滝川の左手を取り、手首に巻かれているメカニカルの時計をみとめた。シンプルな文字盤とメタルバンド。鷹志が贈ったそれに触れると、滝川の視線を感じた。 「至聖さんが抱えてるもの、俺じゃ解決できないレベルなのは判るよ。でも、こうして互いの温もりがあれば、せめて、癒される時がないかな?」  滝川を見上げる鷹志の瞳が熱い想いを秘めている。彼の仕草が、言葉が、滝川の心を揺さぶる。それでも、いや、それだからこそ滝川は鷹志の熱が伝わる手を放した。  これまで彼らは鷹志の存在を関知していなかった。だか、知られてしまった今、鷹志を護るにはどうすべきか、滝川には分かっているからだ。 そして、将大の言葉も重い___『今度は君が、アレ(洸)の監視役だ』 「見送りには行けない、……元気で」 「最期、じゃないよね? また、会えるよね? 至聖さん!」  踵を返した滝川の背中に、鷹志の悲痛な声が突き刺さる。 (あぁ……! 鷹志!!)  滝川は崩れ落ちそうな心を奮い起こした。洸が待っている、と。病室から出て行けば、洸は何事もなかった様に笑顔で滝川を迎えるだろう。芍薬の花で誓った通り、永遠に愛を注いでくれる。 (このドアさえ開けて、洸の溢れる愛情に身を任せれば……。 そして、このドアを開けた時、……永遠に鷹志を失う! いや、何を迷う、既に失っていたではないか!)  なのに、……伸ばした手が震えて、ドアノブに触る事ができない。 (洸がいる……。このドアの向こうで俺を待っている洸がいる! あいつが俺を変えたんだ!!)    だが、滝川の心と身体を丹念に造り変えた洸が、それでも変えられなかったものが、ある。 「……た、たかし!」  滝川の心が、その名を求めた。同時に、いけない、ダメだっ!!と、失態を取り返すために慌ててドアノブを握った。だが、滝川がその場に崩れ落ちたのと同時に、鷹志の腕が背中から滝川を抱き締めた。  
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