プロローグ

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「俺の勘違いだったか…?」 ベンダは頭を掻きながら店の出口へと向かう。 「飲まないの?」 カウンターには、コーヒーが手付かずのまま残っている。 ベンダは札束から1枚の紙幣を取り出して背中越しに投げ捨て、 「要らねえよ」 と言い残し、ベルを鳴らしてMadder(マダー)を後にした。 この時ベンダはドアの向こうで女性とぶつかったらしく、 「きゃっ」 と細い声が上がったのだが、店内のふたりはこれに気付かなかった。 「あれ、もう帰っちゃったの?」 カウンターの奥側から女性がひょっこりと顔を出す。 今までカウンターの下に隠れていたのだろうか。 彼女の顔は褐色で、ショートの金髪を赤いバンダナで覆っているが、 更にその下に何かを付けているらしく、頭頂部の左右が大きく突出している。 もし隠しているつもりなのであれば、全くもって隠せていない。
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